2014年5月18日日曜日

日本国憲法はGHQからの押しつけ?


日本国憲法の存続が怪しくなってきた。特に第9条に関して内閣はこれまでの解釈に変更を加えようとしている。
そこで少し憲法について書いてみたいと思います。
まず始めに現憲法の「押しつけ論」について考えてみたいと思います。

先日ある新聞で首相補佐官の一人が、憲法改正の必要性について「現憲法はGHQの押しつけ」というような表現を使用していた。
現憲法施行後65年以上経過し、既に国民の間に定着した現在、今だにこの様な考えを持っている人がいることに、ましてや政権の中枢にある人がこの様に述べていることに驚愕した。
現憲法の制定過程を考えればこの様な考えにはならないと思うのだが。もっとしっかり勉強をしてからは発言してほしいものだ。
現憲法は周知のとおり第二次世界大戦で敗戦国となった我が国、「ポツダム宣言」を受諾し、新たな国家として再出発するために編纂されたものである。
当時、ポツダム宣言を執行するためで我が国での占領政策をおこなっていたGHQは新憲法の制定に向け、次のような要請をしたとされている。
  それは第一に天皇制の維持、第二に基本的人権の保障、そして第三は民主主義の確立であるといわれている。
これに対して我が国帝国議会を経て提出された憲法改正要綱(1946年2月提出:松本試案と呼ばれる)は、大日本帝国憲法の焼き直し、言い換えれば文言を変更のみと言っても過言ではなく、連合国(GHQ)にとって、とても受け入れられるようなものではなかった。
具体例を少し挙げてみると、第3条の「天皇は、神聖にして侵すべからず」を「天皇は至尊にして侵すべからず」に、第11条中「陸海軍」を「軍」に、第20条中「兵役の義務」を「役務に服する義務」に、そして信教の自由については「安寧秩序を妨げない限りにおいて」と規定し、その他の基本的人権規定も明確ではなく、およそ人権保障を盛り込んだものとはいえない内容となっていた。
この様な我が国政府の取り組み姿勢に絶望した連合国(GHQ)は、自らが主体となって憲法草案を作成することとなったものである。
しかし、ここで誤解してはいけないのは連合国(GHQ)が我が国の国情をまったく無視して進めていたのではない。ということである。
当時、連合国(GHQ)が憲法草案を作成するに当たり大きな影響を与えたのは、鈴木安蔵らによる憲法研究会の作成した「憲法草案要綱」であった。
また、我が国には明治以来の自由民権運動の中で、私擬憲法(有名なものとして五日市憲法など)が数多く検討され、これらにはすでに基本的人権に関する思想が盛り込まれており、これらもまた連合国(GHQ)の草案作成に大きな影響を与えたことが知られている。
この様な事実は、憲法学界での通説となっており、現憲法が押しつけであるとの主張は少数派となっている。
何よりも重要なことは、当時の我が国政府には民主主義という概念はなく、また、基本的人権の尊重という意識もまったく、新憲法(日本国憲法)が公布された際には多くの国民が歓迎していたことから、「押しつけ論」は到底的を得ているとはいえないのではないだろうか。

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